東京高等裁判所 昭和56年(行コ)80号 判決 1982年11月30日
控訴人(被告) 栃木県宇都宮県税事務所長
訴訟代理人 布村重成 新村雄治 外二名
被控訴人(原告) 北王地所株式会社
主文
原判決中控訴人に関する部分を取消す。
被控訴人の控訴人に対する請求を棄却する。
訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
事実
一 控訴代理人は、主文同旨の判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
二 当事者双方の主張及び証拠は、主張として、控訴代理人が別紙記載のとおり述べ、被控訴代理人が「別紙記載一の主張は争い、同二の事実関係は認める。」と述べ、証拠として、控訴代理人が乙第一四号証(写し)を提出し、被控訴代理人が乙第一四号証の原本の存在及び成立を認めると述べたほかは、原判決の事実摘示中控訴人、被控訴人関係部分と同一であるから、その記載を引用する。
理由
一 当裁判所は被控訴人の控訴人に対する本訴請求を失当であると判断するものであるが、その理由は次に削除、訂正するほかは、原判決の理由中控訴人、被控訴人関係部分と同一であるから、その記載を引用する。
1 原判決一八枚目表二行目から同二〇枚目表九行目までを削る。
2 同二〇枚目表一〇行目「4」を「3」に改める。
3 同二一枚目表二行目「第四号証の二」から同裏五行目「明らかである。」までを「第四号証の一、二、第六号証の一、第七号証、第一一号証の一ないし三、第一二号証及び原審証人青柳光男、同佐藤融の各証言の一部によれば、本件建物は地上一二階、地下一階の鉄骨鉄筋コンクリート造りでホテル(六階から一〇階まで)、オフイス(一階から四階まで)、レストラン等(一一、一二階、五階、地階)の多目的の高層建築物であること、前記業務用電力の通電や建築完了届にもかかわらず、本件建物は昭和四九年一二月末当時建築が完成し引渡可能の状態にはなかつたとして検査済証が交付されず(交付は昭和五〇年八月一四日)、代りに前記仮使用が逐次承認されたにとどまつたこと、右昭和四九年一二月末当時は、前記更改契約に基づく一一、一二階の追加工事を含めて、本件建物の基礎工事、鉄骨鉄筋工事、コンクリート工事は完了し、コンクリートの壁及び床もほぼ出来上つていたが、その内部仕上工事、即ち、床工事、内壁工事、天井工事及び照明器具の設置等が全体として未完成で、これらの工事は昭和五〇年一月一杯かかつて、地階及び飲食店用テナント入居募集中の一一、一二階を除いて完成にこぎつけ、同年二月一日の完成披露パーテイに間に合つたこと、請負人岡崎工業株式会社は同月一三日までに注文者融和商事株式会社から現金及び約束手形により請負代金総額の約八〇パーセントの代金を受領し、同月中に本件建物を同会社に鍵を渡して本件建物を引渡したこと、この間融和商事株式会社は昭和五〇年一月二四日付で旅館業法所定の旅館営業の許可を受け、同年二月二四日右旅館営業に伴う地方税法所定の料理飲食等消費税特別徴収義務者の登録をすませたことを認めることができ、前掲証人青柳光男、同佐藤融の各証言中右認定に反する部分は爾余の前掲各証拠に照らして採用しえず、他に右認定を覆すべき証拠はない。
以上の認定事実及びその内装が通常テナントの手によつて施されるレストラン等用の前記各階の特殊事情に鑑みれば、本件建物は、それが建築された一連の工事過程において昭和五〇年二月頃に至つて始めて、前記目的の用途に従つた使用が可能な程度に達したものとみるのが相当であり、これによつてみれば、本件においては、被控訴人主張の電力供給がなされた時点(昭和四九年一一月二八日)をもつて、新築の完了があつたとすべきではないことは明らかである。」と改める。
4 同二一枚目裏六行目から同二二枚目裏二行目までを次のとおり改める。
「4 ところで、不動産取得税は、不動産の移転の際に生ずる担税力を把握して課税する流通税の一種であり、固定資産税は土地、家屋、消却資産の資産価値に着目して課せられる物税であるが、前記のとおりその課税客体の範囲はほぼ同一であり、課税標準となる適正な時価もその算定基準は同一である。そこで、建築途上の家屋がどの程度まで建築されたときに固定資産税の課税対象となるかを考えるに、この点法に明文はないところ、一般に家屋の固定資産税は、市町村長の備える家屋課税台帳に登録されたところに従つてその課税標準を定め(地方税法三四九条一項)、かつ、右台帳に所有者として登録されている者をその納税義務者として賦課するいわゆる台帳課税主義をとつており、そうして、市町村長は建物登記簿に登記されている家屋について所定の事項を家屋課税台帳に登録すべきものとし(同法三八一条三項)、また、登記所は建物の表示に関する登記をしたときは一〇日以内にその旨を当該家屋の所在地の市町村長に通知しなければならず(同法三八二条一項)、通知を受けた市町村長は遅滞なく当該家屋についての異動を家屋課税台帳に記載しなければならない(同法三八二条三項)と定めて家屋課税台帳の登録を建物登記簿の登載と連動させていることから、不動産登記における登記の客体となる建物の態様についての取扱いと同様、必ずしも建築工事の全部が完了しなくとも、建物としての構造上必要不可缺とされる主要部分即ち柱を立て、屋根を葺き、外壁を塗り終つて、社会通念上土地から独立した一個の不動産として取引又は利用の対象とされうる程度に達すれば固定資産税の課税対象とするに足りると解せられないでもない。
しかし、不動産登記制度は、不動産自体の現況を明確にし、かつ、その権利関係を公示して、権利者の地位の保護と不動産取引の安全、円滑をはかるためのものであるから、建築途上の建物であつても社会通念上土地から独立して一個の不動産として遇しうる状態に至れば、これを不動産登記法上の建物として取扱うことも十分是認されるけれども、固定資産のもつ資産価値に着目して公正な課税をはかることを直接の目的とする固定資産税制度のもとにおいて、建築途上の建物の課税対象となる時期を不動産登記法上建物として取扱う時期と同一に解するのは相当でない。
このことは、建物登記簿への登載と家屋課税台帳への登録とが連動させられているといつても、それは市町村長に対し建築途上の家屋が当該市町村に存在することを知らせ、固定資産税の課税事務を適正化、円滑化する趣旨に出たものにすぎず、市町村長は、登記所からの通知に基づいて、当該家屋を実地調査の上評価し(地方税法四〇八、四〇九条)、その評価に基づいて当該家屋の価格を決定し家屋課税台帳に登録する(同法四一〇、四一一条)固有の権限を有すること、固定資産評価基準(地方税法三八八条一項の規定に基づき自治大臣が昭和三八年自治省告示第一五八号をもつて定めたもの。)によれば、木造家屋以外の家屋については、単にその「主体構造部」、「基礎工事」、「外周壁骨組」、「間仕切骨組」、「外部仕上」及び「屋根仕上」のみならず、「内部仕上」、「床仕上」及び「天井仕上」等も評価の対象としており、これらの工事を完了しなければ十全な評点数を算出することができず、延いて当該家屋が有する資産価値としての適正な時価即ち評価基準となる価格を算定しえないことになること、本件の如き木造家屋以外の家屋で大規模な近代的ビルデイングの建築工事においては、屋根、外壁、柱等の工事が完了し、前記のとおり不動産登記法上表示の登記が可能な状態に立ち到つた段階から、その用途に従つて使用収益しうる程度に完成するまでには、通常相当長期を要するものであつて、そうすると、その続行工事を改築ということはできないから、もし前記の表示登記可能な段階で課税対象となるとすると、右続行工事による客観的な資産の増加を把握して固定資産課税上に評価しえなくなること等に徴して明らかである。
そして、右に述べた諸点を考慮すると、建築途上の家屋が固定資産税の課税対象となるのは、当該家屋の一連の建築工事の過程において、課税目的に照らしこれ以上当該家屋の価格の増加が把握できないといえる程度に工事が完了したと認められる状態、換言すれば、当該家屋の本来の用途に応じ現実に使用収益することが可能な程度に工事が完了した状態に達したことを要するものと解するのが相当である。
5 そうすると、3に認定した事実関係に鑑み、本件建物は昭和五〇年一月一日現在、固定資産税の課税対象として所在していた家屋であるということはできず、同年二月頃その課税対象となつたものというべきであるから、昭和五一年度の固定資産評価基準においては「在来分の家屋」ではなく「新増分の家屋」に該当するといわなければならない。それ故控訴人がこれを前提として前記の新基準に従つてした本件不動産取得税賦課決定に誤りはない。
してみると、被控訴人の控訴人に対する本件処分の違法を前提とする本訴請求はその理由がない。」
二 よつて、被控訴人の本訴請求を認容した原判決は失当であつて、本件控訴は理由があるから、原判決中控訴人に関する部分を取消し、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条を各適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 川添萬夫 高野耕一 相良甲子彦)
別紙
控訴人の主張
一 本件家屋は昭和五〇年一二月二二日付け自治省告示第二五二号の固定資産評価基準に係る「新増分の家屋」であることについて
1 地方税法は固定資産税の課税客体である家屋の意義について「住家、店舗、工場(発電所及び変電所を含む。)、倉庫その他の建物をいう。」と規定(三四一条三号)しているのみで、当該家屋が固定資産税の課税の対象となる時期すなわち建築途上の家屋がどの程度まで完成したときに固定資産税の課税客体となるかについては特段規定することがなく、解釈に委ねているところである。
2 原判決は、地方税法三四九条一項、三八一条三項、三八二条一項及び同条三項の規定は「独立不動産といい得る状態に至つて建物の表示の登記をすることができるようになつた建物は、家屋課税台帳に登録されて固定資産税の課税客体として扱われるべきことを示している」ものであるとして、「建物としての構造上必要不可欠とされる主要構造部(屋根、外壁等)を備え、社会通念上、土地から独立した一個の不動産として取引又は利用の対象とされ得る程度にまで達した時に、固定資産税の課税客体になると解するのが相当である。」と判示したうえで、本件家屋は「一一階、一二階については設計変更に伴う厨房や床等の追加工事及び各階の内装等の仕上工事が一部未了であつた」ものの、「昭和四九年一二月末当時、本件建物の基礎工事、鉄骨鉄筋工事及びコンクリート工事は既に完了し、コンクリートの壁面及び床はほぼでき上つて」いたことを認定して、本件家屋は、昭和五〇年一月一日現在、固定資産税の課税客体として所在していた家屋である、すなわち「在来分の家屋」に該当する旨判示している。
3 しかしながら、地方税法三八八条一項の規定に基づき自治大臣が昭和三八年自治省告示第一五八号でもつて定めた固定資産評価基準によれば、固定資産のうちの家屋の評価方法は「家屋の評価は、木造家屋及び木造家屋以外の家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当りの価額に乗じて各個の価額を求める方法によるものとする。」とされているところ、右基準は、右評点数を算出するために、木造家屋以外の家屋については家屋の構造を「主体構造部」、「基礎工事」、「外周壁骨組」、「間仕切骨組」、「外部仕上」、「内部仕上」、「床仕上」、「天井仕上」、「屋根仕上」、「建具」、「特殊設備」、「建築設備」、「仮設工事」及び「その他の工事」に部分別に区分した上、この各部分を更に一般に使用されている資材の種別、品別、品等、施行の態様等でもつて区分した評点数を算出するための基準表を設定しているのである。
したがつて、右評価方法からも明らかなとおり、固定資産税は固定資産の資産価値に着目して課される財産税で、その担税力はその物自体が有している客観的価値に応じて定まるものということができるのである。そして、この当該固定資産の客観的価値を的確・確実に把握するためには、前記評価方法の仕組み・構造からいつて「主体構造部」、「基礎工事」、「外周壁骨組」、「間仕切骨組」、「外部仕上」及び「屋根仕上」に係る工事が完了しているだけでは足りないことはいうまでもなく、建物の内周壁、床及び天井の各部分の仕上部分と下地部分をいうところの「内部仕上」、「床仕上」及び「天井仕上」に係る工事も完了していることを要するばかりではなく、電気設備、ガス設備、衛生設備、消火設備等の家屋に付属して家屋の機能を発揮するための設備である「建築設備」も設置されていることを要するのであるから、建築途上の家屋が固定資産税の課税の対象であると認めることができるためには、当該家屋の建築の一連の工事の段階においてそれ以上家屋の価格の増加を期待できない程度に工事を完了したと認められる状態に達したことを要するものというべきである。
このことは、次のことからも明らかということができる。すなわち、地方税法三四九条一項は「基準年度に係る賦課期日に所在する……家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該……家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で……家屋課税台帳……に登録されたものとする。」と規定し、二項は「基準年度の……家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該……家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となつた価格で……家屋課税台帳に登録されたものとする。」と規定して、ただ、基準年度の家屋について第二年度の固定資産税の賦課期日において「家屋の改築その他これに類する特別の事情」がある場合にはこの限りでないとされているのである。しかるに、建築途上の家屋が「独立の不動産といい得る状態に至つて建物の表示の登記をすることができるようになつた」からといつて、当該家屋に係る建築についての一連の工事は続行され、この工事により当該家屋の客観的価値は増加するものであることはいうまでもないところ、この続行工事による当該家屋の客観的価値の増加部分は地方税法三四九条二項但書が規定しているところの「家屋の改築その他これに類する特別の事情」に当たるものとは到底いい難いことからしても、建築途上の家屋が固定資産税の課税の対象である家屋であるというがためには、当該家屋の建築の一連の工事の段階においてそれ以上家屋の価格の増加を期待できない程度に工事が完了したと認められる状態に達したことを要するものということができるのである。
4 この点、原判決は前述したとおり、地方税法三四九条一項、三八一条三項、三八二条一項及び同条三項の規定を根拠に不動産登記法上の建物の意義と同じく、建物としての構造上必要不可決である主要構造部分を備え、社会通念上土地から独立した一個の不動産として取引又は利用の対象とされ得る程度にまで達した時に、固定資産税の課税客体になるものと判断しているものであるが、不動産登記制度は、不動産の物理的な現況を明確にしてその権利関係を公示し、もつて、権利者の地位を保護するとともに、不動産取引の安全と円滑を図らせるためのものであるから、当該有体物につき登記をなすことが可能な状態に至つた場合すなわち当該有体物が動産の域を脱して、社会通念上、土地から独立した一個の不動産として遇し得る状態に至れば、不動産登記法上の建物ということができるものなのである。これに対して、不動産登記制度と趣旨・目的並びに規律すべき法律関係を異にしている固定資産税制度においては、固定資産税の課税の対象である家屋について、不動産登記法上の建物の意義と同じく、社会通念上、土地から独立した一個の不動産として遇し得る状態に至れば固定資産税の課税の対象であるということは出来ないのである。
また、原判決が根拠として引用している条項にしても、地方税法三四九条一項は「賦課期日に所在する家屋」すなわち固定資産税の課税対象であるところの家屋の固定資産税の課税標準を決めるための規定であつて、建築途上の家屋がどの程度の段階に至つて課税の対象としての家屋になるのか、すなわち「賦課期日に所在する家屋」に当たるといえるのかについてを規定した条項ではない。地方税法上、固定資産税の課税標準が決定される過程を概説すれば、固定資産評価員において固定資産の状況を実地調査して(四〇八条)、この調査の結果に基づいて固定資産の評価をする必要があると判断した場合においては、当該固定資産の評価をなし(四〇九条一項、四項)、市町村長はこの評価に基づいて固定資産の価格を決定(四一〇条)した上で、この決定された当該固定資産の価格等を固定資産課税台帳に登録する(四一一条)こととなつていて、これが当該固定資産に対して課される固定資産税の課税標準となつているものである(三四九条一項)から建築途上の家屋が固定資産税の課税の対象である家屋に当たるか否かは市町村長の判断事項に委ねられているのである。したがつて、地方税法三八二条一項及び三項が登記所に固定資産の表示に関する事項について登記された場合にその旨を市町村長に通知義務を課している趣旨のものも、この通知により市町村長に対し建築途上の家屋が当該市町村内に存在することを知らしめ、市町村長に建築途上の家屋が存在することについての把握もれがないようにさせ、もつて、固定資産税の課税事務の適正化・円滑化を促進させることにより課税事務の便宜を図つた規定というべきものであつて、右通知規定が存在することをもつて、通知されたところの建築途上の家屋が固定資産税の課税の対象である家屋であることを前提にした規定であるということはできないのである。そして、地方税法三八一条三項の規定にしても、これは、家屋課税台帳に登録すべき事項を明定したものに過ぎないのである。同条項は建物登記簿に登記されている家屋について、基準年度の価格を登録することと規定しているが、前述した右価格の決定に至る過程から明らかなとおり、これは、右家屋が固定資産税の課税の対象である家屋であると判断された場合にその家屋の基準年度の価格を登録すべきことを明定した当然の規定であつて、建物登記簿に登記されている家屋は固定資産税の課税の対象である家屋であることまでをも規定したものとは解し得ないのである。
5 以上の様に解するのが相当であることは、固定資産税と同じく当該固定資産の客観的資産価値に着目して課される不動産取得税について、「家屋が新築された場合」の意義につき判断した判決例が参考に値するものであることはいうまでもない。原判決は、「家屋が新築された場合」を規定している地方税法七三条の二第二項の規定は、家屋の新築による取得に対し不動産取得税を課する場合に、当該家屋の取得時期及び納税義務者を定めるための規定であることから、建築途上の家屋がどのような段階に至つて課税客体としての家屋になるかの問題とは関係がないと判示しているが、同条項は家屋が新築されたといい得る場合において、この家屋の取得時期等を定めた規定であるから、不動産取得税の下においても、建築途上の家屋がどのような段階に至つて家屋が新築されたものといい得るかを判断する必要があることはいうまでもない。そして、不動産取得税と固定資産税とは課税対象並びに評価方法が同一であることからして、不動産取得税の下における「家屋が新築された場合」の意義いかんは固定資産税の下においても、建築途上の家屋がどのような段階に至つて新築されたとして、課税の対象である家屋といい得るかを判断するにつき、十分参考に値するものなのである。
しかるに、この「家屋が新築された場合」とは、一般に、当該家屋の建築の一連の工事の段階においてそれ以上家屋の価格の増加を期待できない程度に工事を完了したと認められる状態に達した建物をいう(東京高裁昭和四九年七月三〇日判決・行裁例集二五巻七号九八〇頁、福岡地裁昭和三五年四月八日判決・同一一巻五号一四〇一頁、東京地裁昭和三四年四月二二日判決・同一〇巻四号七四六頁等)とされているのである。
6 そうすると、原判決も前述のように認定しているとおり、本件家屋については、「内部仕上」及び「床仕上」に係る工事(昭和四九年一一月九日付追加変更工事を含む。)が昭和五〇年一月一日現在においては未了であつたというのであるから、本件家屋は原判決が認定する「在来分の家屋」であるということはできず、「新増分の家屋」であるというべきである。
したがつて、本件処分は適法であり、原判決は取消されるべきである。
二 本件家屋が「在来分の家屋」であるとした場合における課税標準について
仮に、本件家屋を「在来分の家屋」であるとした場合における本件家屋の課税標準は別表のとおり、二億三二〇五万二〇〇〇円、税額は六九六万一五六〇円であるから、これらの範囲において本件処分は適法であるこというまでもなく、原判決は変更されるべきである。